岡山大学医学部 細胞生理学 KAMIYA-LAB

Kamiya-Atsunori

がんに自律神経が影響することを発見!
がんの神経医療の開発へ


プレスリリース

・自律神経は、乳がん組織内に入り込み、がんの進展や予後に強く影響することを発見しました。
・ストレスなどによる交感神経の緊張が、がんを進展させ得ることを明らかにしました。
・自律神経を操作する神経医療(遺伝子治療など)が、がんの新規治療戦略になる可能性があることが示唆されました。

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)細胞生理学分野の神谷厚範教授は、共同研究として、自律神経が乳がん組織内に入り込み、がんの増大や転移に強い影響を及ぼすことを発見し、自律神経を操作してがんを抑制するような新しい治療の可能性を示しました。
研究成果は、英国科学誌Nature Neuroscienceに7月8日付けで掲載されます。

<はじめに>
自律神経は、脳から心臓や腎臓などの末梢臓器へ命令(電気信号)を伝える有線ケーブルで、ほとんど全ての臓器の働きを調節しています。疫学研究では、慢性ストレスががんの進展を加速させることが報告されており、ストレスに関連する自律神経の変化ががんに影響し得ることが示唆されていました。しかしながら、たとえば乳がんにおいて、がん組織に実際に自律神経が入り込むのかどうか、あまりよく分かっておらず、さらには、がん組織だけに分布する身体局所の自律神経の機能を調べるための、研究技術も未開発であったため、がん自律神経ががんにどのように影響するのかは、分かっていませんでした。

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<研究成果>
研究チームは、自律神経が乳がんが増大するのに伴って乳がん組織内に入り込み(上図)、がんの増殖や転移に強い影響を及ぼすことを発見しました。ヒト乳がん組織解析により、交感神経密度の高い患者群は、交感神経密度の低い患者群に比べて予後不良であることを発見しました。さらには、ウィルスベクター局所注射によって、がん組織だけに分布する身体局所の自律神経を遺伝学的に機能操作する局所神経エンジニアリングを開発しました。この技術を用いて、乳がん組織(動物)に分布するがん交感神経を刺激すると原発がん増大と遠隔転移が増え、逆に、交感神経をがん組織でだけ除去すると、原発がん増大と遠隔転移が抑制されました(右図)。

<社会的な意義>
現在、がんの治療は、外科手術、抗がん剤などの薬物治療、放射線治療が柱であり、また、がん免疫療法が発達しつつありますが、治療抵抗性のがんも依然として多く、また、各種の副作用の問題もありますので、新しいがん治療の創出が期待されています。本研究グループの研究成果により、今後、がん組織に分布する自律神経を操作する神経医療(遺伝子治療など)が、がんの新規治療戦略になる可能性がありますので、将来、がん患者さんに、新しい治療の選択枝を提示するように発展することが期待されます。

Kamiya A*, Hayama Y, Kato S, Shimomura A, Shimomura T, Irie K, Kaneko R, Yanagawa Y, Kobayashi K, Ochiya T.
Genetic manipulation of autonomic nerve fiber innervation and activity and its effect on breast cancer progression.
Nat Neurosci. 2019

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